誰が偽ニュースを流しているか、偽ニュースの定義について、当初は曖昧で、ロシアやマケドニアなどの親ロシアな人々が書いているとも言われていた。だがその後、米国の偽ニュース騒ぎは、米国内でマスコミやエスタブリッシュメント、軍産複合体、金融支配などに対する批判を展開している、特に右派の非リベラル、反リベラルな言論人のウェブサイトを標的にするようになった。エスタブ・軍産リベラル系のマスコミや言論人が、言論上の自分たちのライバルに「偽ニュース」のレッテルを貼って非難する動きに変質した。オバマ大統領も、偽ニュース批判を発している。 (Fake news website From Wikipedia) (Harsh truths about fake news for Facebook, Google and Twitter) (Here's why “fake news” sites are dangerous) (Obama Joins The War Against “Fake News”)
米マサチューセッツ州のリベラル派の大学教員メリッサ・ジムダース(Melissa Zimdars)は大統領選挙の直後、人々が信じるべきでない偽ニュースのウェブサイトとして100以上をリストアップして発表した。その多くが、リベラルに対抗する右派のサイトだったため、この発表は大統領選に負けたリベラルが、勝った右派に復讐的な喧嘩を売っているのだとみなされ、右派の言論サイトで話題になった。 (Assistant professor Melissa Zimdars compiles list of fake news sites) (False, Misleading, Clickbait-y, and/or Satirical “News” Sources) (Zero Hedge Targeted On Liberal Professor's List of "Fake News" Sources)
このようにマスコミの質が落ちるほど、上記のゼロヘッジやロンポールなど米国の非主流派のニュースサイトが、多くの人に頼りにされ、必要性が高まっている。 (The Mainstream Media Has Only Itself To Blame For The "Fake News" Epidemic) (The REAL FAKE NEWS exposed: '97% of scientists agree on climate change' is an engineered hoax ... here's what the media never told you)
それらをまるごとロシア傀儡の偽ニュースとみなすワシポスの記事は、ライバルをニセモノ扱いして誹謗中傷することで、歪曲報道の挙句に人々に信用されなくなったワシポス自身を有利にしようとする意図が見える。 (`Fake news' & `post-truth' politics? What about those Iraqi WMDs?) ('Fake news' isn't the problem — mainstream news with an agenda is)
しかし、そのライバル潰しで信頼回復を目的にした今回の記事の信憑性を、匿名だらけの怪しいプロパオアネットに依拠してしまったのは、あまりにお粗末で、突っ込みどころが満載だ。ゼロヘッジやロンポールは、さっそく売られた喧嘩を買い、ワシポスなど主流派マスコミこそ劣悪な偽ニュースだと逆批判している。元下院議員でリバタリアン政治運動の元祖であるロンポールはまた、今回のような主流派マスコミによる非主流派メディア・言論人に対する誹謗中傷濡れ衣的な攻撃は、今後まだまだ続くとの予測を発している。 (REVEALED: The Real Fake News List) (uspol Ron Paul Lashes Out At WaPo's Witch Hunt: "Expect Such Attacks To Continue") (Is "Fake News" The New 'Conspiracy Theory'?)
ワシポスの今回の攻撃記事は、すでにマスコミが非主流メディアより信頼の低い弱い立場になってしまっていることを示している。マスコミが今回のような過激で稚拙なやり方で、ライバルの非主流派メディアを攻撃し続けるほど、マスコミ自身の信頼がさらに下がり、知名度が低かった非主流派メディアへの注目度や信頼性を逆に高めてしまう。ワシポスの記事のアイデアを誰が考えたか知らないが、今回のやり方は、稚拙な好戦策を過剰にやって米国覇権(軍産複合体)を自滅させた隠れ多極主義的なネオコンと同様、稚拙なライバル中傷を過剰にやって、軍産の一部であるマスコミを自滅させようとする隠れ多極主義的な策に見える。 (The Fake News Fake Story) (Glenn Greenwald Condemns Washington Post's "Cowardly Group Of Anonymous Smear Artists")
これらの齟齬があるものの、トランプはおそらく、マスコミなど軍産を権力の座から蹴落とし、軍産を冷遇し続けて潰そうとしている(軍事費急増は目くらましかも)。トランプ政権の今後の8年(たぶん再選される)で、マスコミやNATOなど軍産は大幅に無力化されるだろう。世界の覇権構造はぐんと多極化する。最終的に、米国の覇権と軍事費は大幅に減る。多極化へのハードランディングとなる金融バブル再崩壊もおそらく起きる。非主流派の言論人たちが予測分析してきたような事態を、トランプが具現化することになる。 (The Fake Epidemic of Fake News) (Fake Science News Is Just As Bad As Fake News)
米国で偽ニュースが騒がれ出したのとほぼ同時に、欧州ではドイツのメルケル首相が、ロシア敵視の一環として偽ニュース批判を強めた。欧州議会は偽ニュースの発信者としてロシアを非難する決議を出した。欧州において、トランプ陣営は、メルケルと敵対する独AfD、仏ルペンなど、極右や極左の反EU・反移民・親露な草の根ポピュリスト勢力を支援している。マスコミ(軍産エスタブ)とトランプ系の米国の戦いは欧州に飛び火し、メルケル(軍産エスタブ)と極右極左との戦いになっている。米国では、最終的なトランプ系の勝利がほぼ確実だ。欧州でも、メルケルは来夏の選挙に向け、どんどん不利になっている。メルケルは、負けそうなので危機感から偽ニュース攻撃を武器として使っている。米国でも欧州でも、偽ニュースを使った喧嘩は、ニュースをめぐる議論でなく、追い込まれたエスタブの最期の反攻・延命策の一つになっている。 (Merkel Declares War On "Fake News" As Europe Brands Russia's RT, Sputnik "Dangerous Propaganda") (EU Parliament Urges Fight Against Russia's 'Fake News') (Germany is worried about fake news and bots ahead of election)